今炎上してるリビオタワー品川の話

最近Xを見ていると、リビオタワー品川というワードがやたらと流れてくる。
港区に建設中のタワマンで、総戸数815戸、来年(2026年)5月完成予定の大型プロジェクト。場所は品川駅から徒歩13分。アクセスも良くて、再開発のど真ん中。

で、何が炎上してるのかっていうと、その物件の部屋が、まだ完成してないのに大量に転売に出てるということ。
Xでは「同じ業者が30部屋以上一気に転売してる」とか、「豊海の別タワマンと合わせて50戸以上売ってる」とか、半分祭りみたいになっている。

しかも転売価格がとんでもなくて、買った価格より数千万以上乗せされてる部屋が普通にある

ちなみに、これはあくまで「最初に買った人」が誰かに売りつけてる段階で、引き渡しすら終わってない。

当然ながら、実際に住むつもりで買おうとしてた人たちはブチ切れてる。
「転売屋のせいで欲しい部屋が全部消えた」「自分で住むのに、なんで業者と競争しなきゃいけないのか」とか。
開発元の日鉄興和不動産に対しても、「なんで転売対策してなかったんだ」っていう批判が結構飛んでる。

でも個人的には、この話って単に「転売屋が悪い」とかそういう話じゃなくて、もっと根っこにある構造の問題が可視化された例だと思ってる。

まず、そもそも「転売」自体が違法かというと、そういうわけじゃない。
マンションを買ったあとにそれを売ることは、所有者の自由だし、法律的にも問題はない。
実際、住宅ローンの審査も通ってれば、買ってすぐ売ることはできる。

ただ、問題は“買った人が住むつもりが全くない”のに、販売時点で一気に何十戸も業者が確保してるってところ。
これはもう、「住まい」としてのマンションじゃなくて、「転売目的の在庫」になってる。

転売業者が大量に仕込むと、どうなるか。
当然ながら、一般の人たちが希望の部屋を選べなくなる
「ここに住みたい」と思って抽選申し込んでも、気づいたら良さげな部屋はもう全部、誰かの物件になってる。しかも、後から高く転売されて戻ってくる。

しかも最近のタワマンは、当選=利益確定みたいになってるから、
一次取得者はすぐ売って数百万〜数千万円の利益を出す、というループができあがってる。
「株より安全で儲かる」と言われて、投資マネーが流れ込んでいる。

でもその分、本当に住みたいと思ってた人は、値段が上がった後の“転売品”を買わざるを得なくなる
新築を買おうとしてたのに、実質セミ中古。しかも価格は割高。

結局のところ、こういう転売問題が起きる背景には、タワマンが“住まい”じゃなくて“投資商品”として扱われてる現実がある。

今や新築タワマンって、株とか仮想通貨みたいに、「値上がりを期待して買う」ものになってる。
特に港区・中央区あたりの物件は、完成前に転売しても十分に利益が出るってことで、一次取得者=転売屋という状態が当たり前になってきた。

じゃあ、なんでそんなに値段が上がるのかっていうと、
一つには供給が限られていることがある。観光立国云々で、マンションよりもホテルを建てたほうが儲かるので、新築マンションの量自体が減っている。

もう一つは、買える人の層がだいぶ変わってきたこと
昔はファミリー世帯が「一生に一度の大きな買い物」として家を買ってたけど、
今は余裕のある富裕層、法人、外国人、投資目的の人が普通に競争に参加してくる。
実需じゃなくて「利回り」「値上がり率」「出口戦略」で選ばれてる。

そういう人たちが一次販売で部屋を押さえて、
「やっぱ住まないから」って感じで二次流通に出す。
で、それを見た別の投資家が「これはまだ上がる」と思ってさらに高く買う。
そうやって価格がどんどん釣り上がっていく。

本来、住宅って“住む”もののはずなのに、
タワマンに限って言えば、“一時的に所有する金融商品”みたいになってる
そりゃあ、住むつもりの人が普通に部屋を取れなくなるわけだよな、と思う。

で、ここまで見てくると、
「じゃあこの状況、誰が一番悪いんだよ」って話になると思う。
Xでは転売業者が叩かれてるし、デベロッパーへの批判も飛んでる。
実際、そういう声はもっともだと思う。

まず転売業者
大量に部屋を押さえて、値段を釣り上げて、住む気もないのに売り抜ける。
一見すると、悪いのは明らかにこっち側に見える。
でも実際には、彼らは「儲かる仕組みが目の前にあるから、それを使ってるだけ」でもある。
法的にもグレーではなく、むしろ合法。
じゃあ、やらない理由がどこにある?という話になる。

じゃあ法律が悪いのかというと、ここも難しい。
いまの日本では、住宅を買ってすぐ転売することに対する明確な規制はほとんどない
「実需向け住宅に限定して販売する」とか、「引き渡しから〇年は転売禁止」みたいな制度もない。
実際、他の国ではそういうルールがある例もあるけど、日本ではまだ本格的に議論すらされていない。

で、デベロッパー
ここに関しては「止める気があったのか?」っていう疑問が出てくる。
転売が起きることは想定できたはずだし、事前に防ぐ工夫もできたはず。
たとえば契約時に誓約書を取るとか、明らかに業者っぽい購入希望者に対して枠を制限するとか。
でも、やってない。
なぜなら、売れればいいから
早く完売すれば、それは開発側の「実績」になるし、多少転売が起きたところで次の物件の価格設定にも利用できる。
高く売れる=人気物件=相場が上がるというロジック。

つまり、この転売問題ってのは、
「誰か一人が悪い」というよりも、全員が黙認したまま利益を取ろうとしている構造そのものが問題なんだと思う。

転売業者は儲かるから動いてる。
法律は止める気がない。
デベロッパーは見て見ぬふり。
で、その結果、一番割を食うのは、「実際にそこに住みたい」と思っていた人たち。

じゃあ今後、こういう状況は変わるのか?
…たぶん、変わらない。

多少炎上したって、また次のタワマンで同じことが起きる。
人たちは抽選に並び、部屋を選べず、転売された部屋に追加料金を払ってでも入居する。
それでも「タワマンを買えた」ことで、勝ったような気持ちになる。

だから、この構造は壊れない。
少なくとも、“買える側”に回るまでは。

10年くらい前だと都心のマンション投資しませんかみたいな電話がかかってきたり、分譲物件を見学にきてくれると商品券さしあげますみたいなのがあり、わたくしも商品券をもらいました。電話がかかってこなくなったのもそういうことだったのですね。抽選に勝ち抜いてまで購入するご時世なんですね?

資産形成型ワンルームマンションのようなパワーワードが出てくるご時世ですよ

この問題の核心は、個人の悪意ではなく、転売が黙認される市場構造そのものにあるようですね。デベロッパーは利益を優先し、法律も厳しく規制せず、転売業者はビジネスとして成立している。その結果、本当に住みたい人たちが高額な価格を払わざるを得なくなっているのは深刻です。この流れが変わるには、業界全体の意識改革や規制の強化が必要ですが、現状を見る限り、変わる兆しは少ないのかもしれません。