投資において、どれくらいのリターンを得られるかは非常に重要な事項(それがすべてだと言っても過言ではない)である。
- 投資とは
将来において一定のリターン(主に金銭だが)を得るために、手元の資金をリスク(不確実性)のある対象に投じること
不動産投資と株式投資のメリット・デメリット
投資において、どれくらいのリターンを得られるかを測る指標の一つが利回りである。
不動産投資において注意しなければならないことは、単に利回りという言葉を用いるときに、その種類は複数あり、それぞれにおいてその定義や目指すべき水準が全く異なることである。
- 表面利回り(グロス利回り)
- 実質利回り(ネット利回り・NOI利回り)
- キャッシュフロー利回り(CF利回り)
本トピックでは、これらの利回りの違いを説明したい。
- 表面利回り(グロス利回り)
表面利回り = 不動産収入 ÷ 投資金額
表面利回りは、不動産投資で用いられる、最も基本的かつ単純な利回りである。
定義は、不動産収入を投資金額で割った割合となる。
例えば、1億円の物件を購入し、年間800万円の賃料収入を得られる場合、表面利回りは8.0%(800万円÷1億円)となる。
表面利回りは、数値としては最も高い利回りとなり、わかりやすさからも物件のチラシや簡単な会話の際によく用いられる。
しかし表面利回りは、あくまで賃料収入の程度を測る指標であり、どれだけの利益やキャッシュを得られるかを測る指標ではないことに注意をする必要がある。
ただし、投資対象の表面利回りを周辺相場と比較することで、家賃収入や家賃値決めの妥当性を測ることがある程度可能となる。
例えば、物件チラシにおいて、周辺相場よりも高い不動産利回りで掲載がされていた場合に、家賃値決め想定の妥当性を確認することは可能である。
反対に、ペット可や防音設備など、周辺物件よりも強みとなる特徴を備えた物件であれば、周辺相場よりも高い表面利回りを設定する、ということも考えられる(また、そのようにするためにバリューアップを実施し、表面利回りを向上させるということも考えられる)。
- 実質利回り(ネット利回り・NOI利回り)
実質利回り = NOI ÷ 投資金額
=(不動産収入 - 経費) ÷ 投資金額
NOI = 不動産収入 - 経費
= 不動産収入 -(管理費・修繕費・
広告費・固定資産税・手数料等)
実質利回りは、不動産収入から経費を引いた投資収益(NOI)を、投資金額で割った割合となる。
投資対象から得られる収益を測る指標であるため、投資判断の際に売買当事者間で主に用いられる(売り手は、実際に生じている経費実績をもとに、実質利回りの水準を提示することができる)。
ポイントは、物件維持運営にかかる必要経費という、売買当事者双方がある程度同一の目線をもって物件売買金額の交渉を進めるのに適した利回りだという点である。
なお、実質利回りについては、その経費による指標であるため、投資家の運営能力によって向上させることができる。
例えば、前保有者よりも効率的な運営や、場合によっては修繕を自ら行う(DIY)を実施することで、実質利回りおよび物件価値を向上させることも考えられる。
- キャッシュフロー利回り(CF利回り)
キャッシュフロー利回り = キャッシュフロー ÷ 投資金額
= (NOI - 元利金返済・所得税等)
÷ 投資金額
=(不動産収入 - 経費
- 元利金返済・所得税等) ÷ 投資金額
キャッシュフロー = NOI - 元利金返済・所得税等
キャッシュフロー利回りは、最終的に投資家の手元に得られる、キャッシュフローを、投資金額で割った割合となる。
これは、最終的に得られるリターンを測る指標であるため、投資家が自身の投資結果やその想定を判断する際に用いられる指標である。
キャッシュフローは、一般にNOIから、元利金返済と所得税等を控除した金額となる。
ポイントは、キャッシュフローは、物件そのものではなく投資家自身の個別性によるところが大きいという点である。
例えば、同じ物件を購入する場合であっても、全額手元資金で購入すれば元利金返済はゼロとなり、金融機関借入を活用する場合であっても投資家ごとの調達能力によってその金額や金利は異なる。
また、所得税等についても、個人投資であれば所得税・住民税が、法人投資であれば法人税が主に生じるが、この金額も投資家によって異なる。
つまり、キャッシュフローは、単に対象不動産とその運営だけによらず、投資家ごとの資金調達能力や適用税率によって変化するという点が重要である。
そのため、キャッシュフロー利回りは、売買当事者間で共通認識の形成が行い難い指標であるため、売買代金交渉で用いられるというよりかは、あくまで投資家(買い手)目線でどれだけのリターンを得られるかを測る要素が強い指標である。
- まとめ
不動産投資において利回りが複数種類あることは説明した通りである。
重要なことは、どの利回りが優れているかということではなく、それぞれの利回りの違いを理解し、状況に応じて適切に使い分けることであろう。
ただし、単に表面利回りが高い物件というだけで投資判断をしても、維持運営に想定以上のコストがかかり、結果として期待していたリターンを得られないということもあるため、投資家が投資判断をする際は、しっかりと各利回りの想定をしたうえで行うべきだと考える。
また、これを判断するためには、各構成要素それぞれについて一定の知識を有することが必要(例えば、修繕費想定は適切かや、税金計算など)であり、これもまた投資判断においては重要であると言える。
なお、本トピックでは、あくまで単年度利回りに対する説明であり、物件売却まで含めた、投資期間全体での利回りは別に考えられることは注意願いたい。