某Twitterでは終盤の喧嘩の動画だけ見て騒いでいて「今回の会談は、ヴァンスが意図的に煽ったせいで決裂した」という意見が多く見られるが、私はそうは思わない。
切り抜き動画ではなく、会談全体を通して見れば、今回の対立が根本的なものであり、万斯がいなくても避けられなかったことがわかるはずだ。
双方の根本的な対立とは何か?
今回のゼレンスキー訪米の目的は、ウクライナの安全保障に対する具体的な米国の保証を得ることだった。この点について、会談では何度も議論され、記者からも繰り返し質問が投げかけられた。
トランプの主張:
トランプにとって、安全保障の詳細は「全体の2%の問題」(彼の言葉)に過ぎず、後回しにしても構わないと考えている。彼が最優先するのは「鉱物資源の取引」であり、この契約さえ結べば、戦争は終わると主張する。
「私はすでにプーチンと話をつけた。契約を結べば、彼はウクライナを攻撃しない。重要なのはアメリカの利益であり、民主党のバカどものようにウクライナ戦争に金をばらまくつもりはない。私はビジネスマンだ。ウクライナ復興を支援し、その過程で利益を得る。契約が締結されれば、米国からの大規模な武器支援はなくなり、代わりにウクライナのレアアースを掘り出し、アメリカのハイテク産業を支えることができる。アメリカがロシアの安全を脅かさなくなれば、ロシアに戦争を続ける理由はなくなる。だから、この取引こそが平和の前提条件だ。その他の問題は細かい話に過ぎない。」
ゼレンスキーの反論:
「プーチンの和平の約束を信じられるのか?彼はこれまでに25回の和平合意を結んできたが、そのすべてを破棄し、ウクライナへの攻撃を続けてきた。」
しかし、トランプはこう返した。
「あの時の米大統領はバイデンだ。だから駄目だった。今は私が大統領だ。プーチンは私のことを理解し、私も彼を理解している。私との約束なら、彼は必ず守る。」
対立の本質:ロシア・ウクライナ戦争は何の戦いなのか?
トランプの見解:
トランプは、ロシア・ウクライナ戦争の本質は「ロシア対ウクライナ」ではなく、「ロシア対アメリカ」の戦争だと考えている。彼にとって、そもそもの原因はNATOの東方拡大であり、民主党の政策がこの戦争を引き起こした。もし自分が大統領だったなら、この戦争はそもそも起こらなかったと主張する。
「私はアメリカ第一主義を貫く。もう同盟国に金をばらまかない。むしろ、彼らから金を稼ぐ。そうすればロシアとアメリカの対立が消え、戦争はすぐに終わる。」
ゼレンスキーの見解:
ゼレンスキーは、戦争の本質はロシアのウクライナ侵略であり、ロシアとアメリカの対立とは関係ないと考えている。彼の発言の意図が本心か演技かはともかく、彼は会談中に何度も明言した。
「この戦争の当事者はロシアとウクライナであり、アメリカではない。これはロシアによるウクライナとウクライナ国民に対する戦争である。だから、ウクライナは必ず交渉の主要な当事者でなければならない。」
ゼレンスキーの主張はこうだ。
「プーチンは戦争狂であり、虐殺者であり、テロリストである。彼はウクライナという国の存在自体を認めていないから侵略した。次に彼が侵略するのは他の国々だ。」
「だからこそ、アメリカはウクライナを支援しなければならない。我々は自由と民主主義を守るために戦っているのだ。プーチンのような戦争狂を止めなければならない。」
この流れで、ゼレンスキーは次のような警告を発した。
「今は大西洋があなたたちを守っているが、その安全を当然と思わないほうがいい。いつかあなたたちも理解することになる。」
つまり、アメリカがウクライナを支援しなければ、いずれロシアはアメリカにも脅威をもたらす、というメッセージだ。
ゼレンスキーの戦略は明確である。
「戦争を終わらせるには、アメリカのさらなる武器支援が必要だ。ウクライナ軍が圧倒的に強くなり、プーチンに恐怖を抱かせるほどになれば、戦争は終わる。」
この考えに基づき、ゼレンスキーは会談中ずっとプーチンを激しく非難し、トランプにもそれに同調するよう求めた。しかし、トランプはそれを拒否し、むしろプーチンとの「相互理解」を強調した。
なぜヴァンスの発言が注目されているのか?
ヴァンスの発言が目立つ理由は、彼がトランプ以上にゼレンスキーに対して強硬な態度を取ったから だ。 これにより、ゼレンスキーとの対立が表面化し、結果として会談の雰囲気が一気に悪化した。しかし、先ほど述べたように、対立の本質はヴァンスの挑発ではなく、トランプとゼレンスキーの考え方の違いにあると考えている。