剣道という武道をご存知だろうか。竹刀で面、小手、胴、突きを打ち合うあの競技だ。その剣道に剣道家の間で継承されている日本剣道形という決められた動きがある。形稽古(型稽古と書かれることもあるが正しいのは形だと言われる)の説明を軽くすると、剣道の基になった剣術の各流派で映像資料などの技術が無かった時代から形稽古(定められた動き)を通して剣の戦術などを世代を超えて学ぶ手法があった。それが形稽古。
剣道は簡単に言えば、嘉納治五郎が柔術を集めて柔道になったように剣術家も集まって作られたのだが、剣道が中等学校(昔の学校教育)に取り入れられるにあたって稽古できる形を新たに作成したらしい。それが日本剣道形。
で、この日本剣道形が実態としては失伝しているのではないかと言うのが今回の都市伝説。
第二次世界大戦中に武道団体が政府に協力したという事で武徳会という武道の統括団体が内務省令か何かで戦後解体され資産や資料が没収の上年単位で武道が禁止された時期もあったりしたそうで、元々文字と口伝がほとんどで映像技術も発展途上だった中での剣道形の普及にダメージがあったのではと言う説もある。武道団体の再建も同じ体制に復元されることは無かった。武徳会が解散、剣道は剣道連盟、剣道協会、他。
ここまでの話はネット上の公開情報を適当に集めたまでの話で不正確な部分もありそうだったり、戦後統治の影響に否定的な人も居たりするから話半分に聞いてもらって。
で、本題。現在映像資料も豊富で剣道の大会でほぼ毎回演武される剣道形のどこが失伝しているのか、ちゃんと伝承されているじゃないかと思われるだろう。ここでまず思い出して欲しいのが、形稽古の意味、目的。形稽古は決まった動きの中にその流派の剣の理論や戦術、思想などを込めて後の世代に伝えていく物だ。つまり、現在継承されている日本剣道形にもそれらが込められているという事で形には動作だけではなく中身がある。
さて、まずネット上で剣道形を調べると形解説書や演武映像などが出てくる。ここで気付く。恐らく多くの情報がどう動くのが正しいか、どんな気持ちでこの部分を動くかという事に限られる。どういう気持ちでどう動くかは分かるが、そうやって表現した剣道形が形を打つ学習者に何を伝えようとしているのか、形の中身についての情報がほぼ無い。
また、この様な問題意識から日本剣道形の中身について書かれている物も一部あるにはあるが、それはその筆者の推測や誰から聞いたという伝聞形式だったり、しかも剣道連盟が伝える形と違う内容だったりする。
実は具体的な動作もその解釈も剣道連盟の内外、時期や派閥などで異なる内容があり変更も繰り返されてきた経緯があるらしく、現在の正式な剣道形の映像と、白黒映像の時代の有名な先生の剣道形で動きが異なっている事を指摘するコメントも動画サイトにある。この経緯は所謂ブラックボックスだ。
日本剣道形は段位の審査に関わる物であるので、審査を受ける方はもちろん当時の中等学校向け(剣道に初めて触れる生徒も居る)≒初心者向けであることから剣道を始めた人がまず先に 中身を含めて 学ぶべきものであるはず。だが多くの道場や部活動でも練習内容はどうもそうはなっていない。
また、剣道youtuberを名乗る剣道家も少数居るが視聴者から剣道形について質問を受けると技術向上を目指すにはほぼ無意味なものと見ているのが答えから分かる。一部の高段者は形稽古を重視しているという噂もあるが、それらの情報は一般の剣道家やネット上にはほぼ降りてこない。当然そういった高段者達が剣道形の中身をそれぞれどう考えているかもブラックボックスだ。
もしかすると日本剣道形の中身は現代に正しく伝承されていない、半分失伝状態かもしれない、と言う話。
信じるか信じないかはあなた次第です。